先日CSで見た「アリス&ピーターパン はじまりの物語」。
あまり評判は良くない作品ですが、私的にはかなり好きな作品です。

原題は「Come Away」。
例によって安っぽい邦題をつけられてしまったので、アリスとピーターパンの冒険物語かと期待した方も多かったと思いますが、原題通りに受けとめれば、子どもから大人になる瞬間のファンタジーとすれば、すっきり落ち着く美しい物語だと思います。

米国映画では、しばしば「仔鹿物語」のような、子ども時代から大人へと変化する心の痛みや葛藤を描いた作品が数々ありますね。

無邪気な楽しい子どもから責任ある大人になることを突き付けられる瞬間。

日本ではあまりに子どもが甘やかされ、勉強さえしていればと大人になる責任を語ることが少ないですね。

いつまでも何もなかったかのように親の庇護に置いておく日本に比べると、自立ということの意味をきちんと子どもに自覚させる欧米文化。


この映画でも、ジェームス、ピーター、アリスという3兄妹の楽しい子ども時代から、ある日突然ジェームスの死によって大人になることを突き付けられる日々。

守ってくれる存在の両親も我が子の死を受け止められずアルコールに走ったりギャンブルに走ったり...

たとえ死であっても何もなかったかのように日常を取り戻す日本人と比べ、あまり重い我が子の死を受け止めきれず苦しむ両親の姿を子どもの目線からよくとらえています。
そんな母親を演じるのはアンジェリーナ・ジョリー。
彼女の映画では一番好きかも。


そして残されたピーターとアリスはそれぞれ、ピーターパン、不思議の国のアリスの世界にはいりこむことで、兄の死を乗り越えようとする。

ひと夏の子ども時代の思い出をつづった美しいファンタジー。

キラキラ輝く夏の自然、光、素敵な調度品。
どれもが美しい。


そして大人になったアリス。
ピーターはあえてファンタジーの世界にそのまま残し、お母さんになったアリス。

忘れさられてしまう子ども時代の一瞬がうまく切り取られています。