久々本の紹介です。
しかも新作。

パリ在住の中国人が春節の休みに帰郷した際、武漢のロックダウンを経験し、その後パリへ戻った際にパリでもロックダウンを体験。

作者はまだ30代で中国の大学を出た後、様々な経歴の後フランスのIT企業に就職。

二つの文化を持つ彼が母国語ではないフランス語で書き下ろしたもの。


武漢のロックダウンの衝撃的なニュースの後、瞬く間に広がったコロナウィルス。
今も世界中が第3波、第4波に襲われ感染拡大は止まらない。

日本でも変異ウィルスでどこまで感染拡大するか見通せない状況が続いている。


武漢のニュース映像を見たときには他人ごとのようにその実態を捕えていたが、実際その渦中にいるときにどんな生活を送っていたのか興味深い。

感染していない多くの人は、ロックダウンという物々しさの中で過ごす日常生活は比較的平凡なもの。
自由に買い物に行けなくなると、配給のように肉や野菜を購入。
日常に様々な食べ物があふれている日本人には耐えがたい経験かもしれない。

先日のバイデン大統領の演説にもあったように、中央集権国家では、あっという間に国家が個人の権利を制限し、集中的に問題を解決していける。

フランスに住んでいる彼はそんなやり方に疑問を持ちながら、うまくすり抜け、何とかパリへ戻る手立てを立てていく。

その行動力と判断力は異国の地でIT企業で働くという能力があるからこそかもしれない。

大抵の日本人は陰で文句は言いつつも、自力で何とか解決しようとする行動力や知恵を持ち合わせていないだろう。


そしてパリに戻ってのロックダウンは武漢とは様変わりし、こんなゆるゆるでいいのかと悩むことも。

中国の厳しい環境で育った彼には、こんなことに耐えられなくてどうするといったフランス人に対する思いも。

ただ彼はそこにとどまらず、中国とフランスの文化の違いを受け入れていくおおらかさを持っている。

  フランス人、中国人、西の人、東の人、北の人、南の人。白人、黒人、ユダヤ教徒、キリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒。金持ち、貧乏。異性愛者、同性愛者、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア。左派、右派、中道派、無党派...。これらの人々が見なフランスにいる。だから僕はフランスを愛しているし、時が経てば経つほど自分もフランス人だと感じるようになっているんだ。



本のタイトルとはかなりかけ離れた彼のつぶやき。

あまりに些細なことで分断されてしまったこの世界で、共存して生きていく、違う文化を尊重し認め合うそんなことが大切だと教えてくれた本でした。

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