三国志がらみで中国の本が読みたくなり、ノーベル文学賞受賞のパール・バック作「大地」。

日本では「大地」でひとまとめにされているが、初代王龍の物語が「大地」で、その後に続く物語は第二部「息子たち」、第三部「崩壊した家」というタイトルがつき、それぞれ別な物語になっている。

昔々この第一部の「大地」だけを読み、その後のストーリーは読む機会がなかった。

清朝末期の中国の農地で一代で成功を収める王龍。
当時は土地を持つことことが社会的に成功する鍵に。
彼を支える妻の阿蘭。

それぞれの3人の息子たち。
父の思惑とは異なる道を歩む。

そして第二部は三番目の息子王虎。
彼も父とは違う軍人の道を歩みながら一人息子の王元にすべての期待と愛情を注ぐ。

第三部は王元がアメリカ留学での出来事、そして帰国後の彼の生活。
時代は着実に近代へと歩みを進める中で、取り残される人々、台頭する人々。

祖父の時代とは全く様変わりしてしまった都会の生活の中で、王元に残る土への愛着。

第一部だけでは見えてこない大きな歴史の流れ、人々の生活、価値観の変化が全部を読み通すことで見えてきます。


作者のパール・バックはアメリカ宣教師の娘として中国へ渡り、そこで激動する中国の様子を目の当たりにし、この物語を書いたという。

王元がアメリカへ留学した時の様子などアメリ人から見た当時の中国人(アジア人)の様子が描かれている。


現在の私たちでさえ、現地を自分の足で旅すれば少なからずカルチャーショックを受けることがある。

当時の彼らはまさに見るものすべてが全く違う文化に触れ、そこで6年間間学び通したことに並々ならぬ意志の強さを感じるし、そうして中国本土に戻ってきたとき、あれほど嫌悪していた自分のルーツに愛着を覚え、自分と同じ中国の女性を妻に娶る。


彼女のアジア人に向けられた視点は私たち日本人にも当てはまるし、その中で時代の変化を受け止めながら生きていく主人公たちの強さに感動する。


それぞれ持っている自分のルーツを大切にしながらも他者を排除することなくうまく取り入れていくしたたかさ。


さすがに時代を経ても新しい発見がある「大地」でした。
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