ようやく地元の図書館も開館し、本が借りられるようになりました。
まだ椅子は片づけられ貸し出しのみです。


ふと手にしたのがオランダ出身のドラ・ド・ヨング作「あらしの前」「あらしのあと」。


オランダ生まれだが、ナチス侵入を逃れるためモロッコからアメリカに渡り作家として活動します。

この「あらし」というのはドイツ軍のオランダ侵攻をさし、それ以前ののどかなお医者さん一家の生活と戦後の苦しい時代を生き抜く一家の成長ぶりが綴られています。


今回のコロナウィルスの惨禍は、まさか私が生きている時代にこんなことが起こるなんてと思ったことでした。
もちろん東日本大震災や9.11テロなど痛ましい出来事も数多くありましたが、今回のように全世界で、そしてまだ毎日何十万の人が亡くなっていく惨禍はなかった気がします。

ヨーロッパでの次々苦しみながら亡くなっていく様子は衝撃的で、とてもこの世のものとは思えない状況でした。

いつまで続くかわからないウィルスとの闘いにおびえながら日々の生活を送っています。
ワクチンがいつ私たち一般の庶民に届くのか、まだまだわからない中で、漠然と不安を抱えた生活がこれから当分の間続くことでしょう。


そんな状況がこの本とよく似ている気がします。
一家も大切な家族を戦争で亡くしました。

直接の戦争の惨劇は描いていなくても、それが残す傷跡がどんなに深く人々の心に刻まれるのか、子ども向けに優しい表現で描かれています。


この本の訳者が吉野源三郎さんということもこの本の魅力を増していると思います。

「あらしの前」には作者の前書きがあり、引用させていただきます。

「けっきょく、世界というものは、おおぜいの人からできあがっているのであって、わたしたちは―あなたもわたしもーそのおおぜいの人の一部なんです。」


この大変な時代の中で、やはり大切なのは物ではなく人、そして家族ということを実感している今日この頃です。
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